PN. エクストリームバニラ[1年]

ノベルゲーム「終末デザイア」

ノベルゲーム「ストロボ流星群」

800字小説「背景、愛しの息子へ」

ボロアパートに帰ると郵便受けに「金山 直樹 様」と、懐かしい字が目立つ僕宛の封筒があった。懐かしく思い、その場で封を切る。
「お久しぶりです。お元気ですか?お父さんとお母さんは元気です。」
 僕は思わず微笑む。ここしばらくは専門学校が忙しくて実家には帰られなかったので、二人の様子が分かるのは嬉しい。
転ばないよう気を付けながら、外付けの階段を上る。チラリと手紙に目をやる。
 「お母さんは最近、指からビームが出るようになりました。」
……は?どういう事?思わず足を止めて二度見してしまう。が、その一文は相変わらず意味不明のままだった。
 「病院に行来ましたが、健康には問題ないとの事でした。」
いや、少なくとも何かしら問題はありそうなのだが。
 「これも意外と便利で、お父さんがパチンコや競馬に行こうとしたときに一発足下に撃つと、一回で行かなくなります。今日も撃ちました。」
いや、恐怖しているだけではないのだろうか。
というか「今日も」ということはまさか毎日ではないだろうか?毎回ビームを浴びている実家の床が焦げていないか心配だ。
 ガチャリ、と僕の隣の部屋の扉が開く。頭がだいぶ禿げ上がった、完全に部屋着のおじさんが財布を持って出てきた。
 軽く挨拶を交わすと、僕は自分の部屋の扉を解錠し、極端に家具の少ないワンルームが覗き見える玄関に足を踏み入れる。
 「飯田さんの奥さんが、この特技を羨ましがっていました。直樹君、このビームの伝授方法を知っていたら、是非教えて下さい。」
うん、無理だな。僕はビームが使えないし、教え方なんてもっと分からない。しかも、何で母がそうなったのか、原理がどうなっているかも知らない。科学者じゃないんだから。
「本当は顔を見たいのですが、忙しいでしょう?たまには電話だけでも下さいね。それでは体調に気を付けて、勉強を頑張って下さい。母より。」
僕は黄ばんだ天井を仰ぐ。今度の休み、帰ってみようかな。
……いろいろな意味で心配だから、ね。